Gionshigyounikki
平成31年度(令和1) 国庫補助金
重要文化財 祇園執行日記
美術工芸品保存修理抜本強化事業概要
【事業目的】
八坂神社所蔵の祇園執行日記は、中世後期の京都の社会や経済、文化に関する重要な史料である。
修理前の状況は、虫損による料紙の欠失が著しく、本紙の擦れや紙縒りの外れなど、経年や使用に伴う損傷が生じていた。
今回の事業では、今後の展示などの多様な活用が期待されるため、本紙の解装、料紙の欠失箇所には補修紙を作製し補紙を施すなど本紙を安定した状態にし、裂貼四方帙や桐倹飩箱を作るなどの保存修理を行う。
【全体の事業期間】
平成28年度から平成31年度までの5ヶ年
【修理請負】
株式会社 修 美
【本年度総事業費および補助金額・補助率】
総事業費:2,435,290円
国庫補助金:1,461,000円(補助率60%)
【本年度修理内容の概要】
今回の修理では本紙の解装、料紙の欠失箇所には補修紙を作製し補紙を施すなどの根本修理を行い、本紙を安定した状態にした。また、 裂貼四方帙や桐倹飩箱を作製した。
【修理前・修理後の比較ページ】
【修理工程】
1.修理前調査
本紙を詳細に調査し、写真撮影等を行い、修理前の損傷状況の記録を行った。
2.解体
綴じ糸を外し、本紙を一紙ずつの状態に展開した。
3.ドライクリーニング
柔らかな筆や刷毛を用いて、ドライクリーニングを行い、本紙に付着している虫糞や埃などを取り除いた。
4.剥落止め
必要に応じて墨層・朱層部分に膠水溶液にて剥落止めを行った。
5.裏打紙除去
必要最小限の加湿を与え、旧補修紙や裏打紙を除去した。
その後、本紙を吸取紙の上に載せ、濾過水を軽く噴霧し、汚れを吸収させた。
6.補修紙作製
【DIIPS方式】
デジタル写真撮影した料紙のデータを元にして、DIIPS方式にて虫損部分の補修紙を作製した。
【手繕】
料紙の紙質検査を踏まえて、本紙と同質の補修紙を手漉きに て作製した。
-
工程写真1:修理前調査
-
工程写真2:解体
-
工程写真3:ドライクリーニング
-
工程写真4:剥落止め
-
工程写真5:旧肌裏紙除去
-
工程写真6:補修紙作製(DIIPS 方式)
7.補修
【DIIPS方式】
工程6にて作製した補修紙を用いて、虫損による欠失が著しい箇所を補填した。
【手繕】
工程6にて作製した補修紙を用いて、大きな欠失箇所を手繕いにて補紙を施した。
また、折れ山の損傷個所には薄楮紙の帯を用いて補強した。
そして、裏打紙の除去により、本紙の端と綴じ穴が近い場合は足紙を施した。
8.本紙のデジタル写真撮影
本紙両面のデジタル写真撮影を行い、裏面などの記録をした。
9.仕上げ
表紙は欠失箇所に補修を施して再使用し、新調した紙縒りを用いて、冊子装に仕立てる。
10.記録
写真撮影等を行い、修理に関する記録を行った。
11.保存
冊子ごとに裂貼四方帙を新調し、新調した桐倹飩箱に納入する。また、旧保存箱に過去の修理において施されていた旧裏打紙、
別置保存の付箋や断片、旧紙縒り等を納め、新調した桐倹飩箱に納入した。
12.報告書作成
今回の修理に関する報告書を作成し、修理を完了した。
-
工程写真7-1: 補修紙作製(手繕い)
-
工程写真7-2:補修
-
工程写真8:本紙のデジタル写真撮影
-
工程写真9: 仕上げ
-
工程写真10:修理後記録
-
新調した桐検飩箱
-
新調した桐検飩箱
-
新調した裂貼四方帙(No.1.2.3)
-
新調した裂貼四方帙(No.4.5.6)
-
新調した裂貼四方帙(No.7.8.9)
-
旧保存箱
-
繊維顕微鏡写真 表紙(100 倍) 雁皮の繊維が見られる。
-
繊維顕微鏡写真 共紙表紙(100 倍) 楮の繊維が見られる。
-
繊維顕微鏡写真 共紙表紙(100 倍) 楮の繊維が見られる。